サ高住のゆくえ(その1)

2013/9/30


株式会社立地評価研究所 大阪本社 芳賀 美紀子

サービス付高齢者向け住宅(サ高住)の登録開始(2011年10月)から2年弱が経過した2013年6月現在の登録件数は全国で3,531棟、11万3899戸に達しました。政府はサ高住を「在宅希望の高齢者の受け皿」と位置付けており2020年までに60万戸を整備する計画となっていますので、計画達成可能なペースで供給が進んでいることになります。

棟数ベースで最も多いのは大阪府で、次いで北海道、東京都、埼玉県、神奈川県、福岡県の順となっています。大都市圏でサ高住が急増していることが見てとれます。

大阪府で見た場合、地価が高い中心区での供給は少なく、比較的地価の安い府下を中心に供給が進んでいます。正確にいえば「大都市圏の中にある郊外エリア」でサ高住が増加しているということになります。

サ高住の供給が地域によって濃淡があるため、一気にサ高住が増えた自治体では参入規制を強化することが予想されます。それはサ高住の入居者が「平均年齢82.6歳」「約83%が要支援・要介護認定者」ということから、自治体の介護保険負担と切り離せないからです。

具体的にいえば、サ高住では住所地特例(被保険者が住所地以外の市区町村に所在する介護保険施設等に入所等をした場合、住所を移す前の市区町村が引き続き保険者となる特例措置。施設等を多く抱える市区町村の負担が過大にならないようにするため)が適用されるのは特定施設の指定をされている場合と入居契約が利用権方式である場合のみだということで、サ高住にとってハードルが高いのです。一気にサ高住が増えれば周辺市町村の高齢者を結果的に吸引することになり介護保険の負担増を懸念する自治体にとっては、サ高住を利用権方式にするか、供給規制をかけるかを迫られてしまうからです。

一方、事業者からすれば賃貸借契約でないとサ高住の税制優遇や低利融資という支援策が使えないというジレンマを抱えています。

事業者側にとっては単なる「高齢者向け施設」ではなく、地域に根付いた社会インフラであるという具体的な発信が必要となってくると思われます。