生産緑地の相続

2014/5/2


株式会社立地評価研究所 大阪本社 大村 聡

「我が家に相続税が発生するほどの財産はない。」
そう思っていても、相続の場面になってはじめて、多額の相続税が発生することに気付くケースは多々あります。「生産緑地の相続」は、まさにその典型例といえるでしょう。

生産緑地の概要

農業において得られる収益は小さく、効率的な農業経営のためには広大な土地が必要となりますが、市街化区域内において農地を所有する場合、固定資産税が非常に高額となり、採算の取れる農業経営を行うことは難しくなります。

しかし、市街化区域内であっても農地を保全しておきたい地域については、行政により生産緑地の指定を受けることで、市街化調整区域と同程度の固定資産税に抑えることができます。

また、相続時には相続税の納税猶予を受けることもできます。ただし、相続人が営農をやめると猶予されていた相続税を支払わなければなりません。

生産緑地の相続税評価額

固定資産税の評価額が低いからといって、相続税の評価額が低くなるわけではありません。相続税の算定にあたっては、財産評価基準に基づくことが原則です。

この場合の相続税評価額は、「その土地が生産緑地で“ないものとして”評価した価額」をベースに算定します。市街化区域内の土地であるため、生産緑地が解除された土地は非常に高額な評価額となってしまいます。固定資産税の評価額と比べると、相続財産は大きく膨れ上がってしまうことを認識しておく必要があります。

生産緑地の鑑定評価

相続財産は時価で評価されるものであり、財産評価基準にて算定した評価額が適正な時価を反映しているとは限りません。生産緑地のように利用制限の大きい土地であればなおさらです。

当社グループでは昨年、およそ2,600m²の生産緑地について鑑定評価のご依頼を受けました。税理士が算定した生産緑地の評価額はおよそ7,300万円でした。しかし、生産緑地に指定されていることによる土地利用の制限、農業経営に基づく収益額、周辺の宅地や宅地となる見込みがある土地の取引価格の水準等を調査・検証し、当社にて算定した鑑定評価額はおよそ3,400万円となりました。財産評価基準に基づく評価額の半分以下となり、ご依頼者から大変感謝されました。

 

生産緑地をはじめ財産評価基準による画一的な評価が馴染まない不動産は多数あります。疑問や不安がありましたら、一度当社グループにご相談ください。