遺産整理ビジネス最前線

2015/12/16


株式会社立地評価研究所 大阪本社 大村 聡

遺産整理ビジネスとは

遺産整理ビジネスが脚光を浴びている。その内容は非常に幅が広く、まだ新しい分野であるため、需要も相当に大きいものと言われている。ちなみに信託銀行などが加盟している信託協会の統計によると、遺産整理業務の受託件数は平成6年を100とすると、現在はその7倍の規模にまで成長している分野である。

遺産整理受注件数推移

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普通の人であれば、相続が発生すれば次のような手続きの必要に迫られる。

  1. ① 保険金の請求
  2. ② 年金・健康保険の請求・切替
  3. ③ 遺産(債務含む)の確認
  4. ④ 相続人全員による遺産の分割協議・協議書の作成
  5. ⑤ ローンの返済・承継
  6. ⑥ 不動産の名義書換
  7. ⑦ 有価証券、預貯金、信託、その他の動産(ゴルフ会員権など)の名義書換
  8. ⑧ 税務申告・納付

税の問題や不動産の登記名義変更など専門家でなければ出来ないこともあるが、大半の事項は参入者の制約はない。当事者がやってやれないことはないが、一生のうちに何度もするようなことではないし、日常生活のあい間にやろうとすると非常に煩雑である。誰か手慣れた人が代行してくれれば大変助かるという点で、まさにすき間ビジネスといってよい。

遺産整理ビジネスは人が亡くなった時点から始まり、遺産整理が無事に終わった段階で終了する。

主だった内容は次のようなものであるが、その内容を順次説明する。

  1. ① 法定相続人の調査・確定
  2. ② 相続財産の調査・把握
  3. ③ 遺産分割協議
  4. ④ 預貯金・有価証券などの名義変更
  5. ⑤ 不動産の名義変更
  6. ⑥ 相続税の申告アドバイス
  7. ⑦ 相続財産の管理運用アドバイス
① 法定相続人の調査・確定

相続人が一目瞭然に分かる場合はともかくとして、複雑な親族関係がある場合、また被相続人が生前そのようなことを秘していた場合などもあり、非常に重要な作業となる。相続の手続きはここから始まるといっても過言ではない。被相続人の戸籍(除籍)謄本を取得することで相続人の範囲を確定・確認する作業であり、司法書士や金融機関がこの調査を手掛けている例が多いようである。

② 相続財産の調査・把握

一般個人の場合は、預貯金や有価証券、不動産などが相続財産の代表的なものであるが、企業経営者が被相続人の場合では株式が重要である。また相続対象は一切の資産となるため、貴金属・美術品・自動車・家具などの動産、借地権・売掛債権・出資持分・生命保険金などの債権などもある。
財産目録を作成することが目標となるが、不動産の比率が高い場合や、同族間での借地権設定などが行われている際など、複雑な権利関係となっている不動産が多い場合は、不動産鑑定評価の活用も必要となる。

③ 遺産分割協議

財産目録や財産の評価資料をもとに、相続人の間で遺産分割協議を行い、その結果に基づいて「遺産分割協議書」を作成する。

④ 預貯金・有価証券などの名義変更

遺産分割協議が調えば、あとは事務的な手続きといえるが、信用のおける代行サービスがあれば重宝される領域であろう。

⑤ 不動産の名義変更

遺言の実行に関しては信託の活用などが脚光を浴びている。この分野の実務への導入が進展していくことが予想される。

⑥ 相続税の申告アドバイス

相続税の申告・納付手続きについては、相続人から依頼をされた税理士が行うこととなる。

⑦ 相続財産の管理運用アドバイス

財産の管理、運用、処分、不動産の有効利用コンサルティングから生活設計にいたるまでのご相談業務。相続人のご希望に応じて、専門スタッフがコンサルティングを行う。

遺産整理ビジネスの報酬

ワンストップで依頼できれば、依頼者側の負担は軽減化されるが、一方で信託銀行等へ依頼する場合、銀行へのフィーのほかに、司法書士や税理士等の専門資格業へのフィーも必要であり、かなり高額だとも言われている。ちなみに大手銀行や信託会社、司法書士など遺産整理をサービス業務とする専門家の報酬料を整理してみた。このケースでは3億円の相続財産を前提とした。  最低報酬額はばらつきがあるが、3億円を想定した場合の報酬額は2,000千円~4,000千円と一定のレンジ幅の価格帯といえる。

 

調査機関 最低報酬額 3億円のケース
A都市銀行 1,620千円 3,834千円
B都市銀行 1,080千円 3,240千円
C信託銀行 1,080千円 4,050千円
D信託会社 513千円 2,052千円
E司法書士事務所 324千円 2,138千円