2024.10.23
コラム
ニュースリリース
「Happiest Place on Earth(地球でもっとも幸せな場所)from Japan」を体験するには
株式会社立地評価研究所 大阪本社 吉田 智範
公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書(2023年版)」によると、2022年の遊園地・テーマパーク市場は、6,910億円(前年比約+96%)、余暇活動の参加人口についても、1,550万人となっており、コロナで落ち込んだ状況から大きく回復しています。個人的にも新幹線や飛行機を利用すると混雑していることが多く、全国各地の観光地は賑わいを取り戻してよかったと思う反面、子連れで外出するのが億劫になるほどです。鑑定評価においては、商業施設の売上が落ち込んだ時点では収益の予測に苦労しましたが、今となっては「御社鑑定の予測以上に回復しています」との声もいただき、ホッとしている次第です。
さて、レジャー・テーマパークといえば東京ディズニーリゾート、USJが大好きな日本人ですが、今年の6月6日、東京ディズニーシーが新しいエリアとなる「ファンタジースプリングス」をオープンしたことが話題となっております。人気映画の「アナと雪の女王」、「塔の上のラプンツェル」等のアトラクション新設は、ディズニーシー開園に匹敵する3,000億以上のとてつもない投資額であり、増収効果は年間750億円を見込んでいるとのことです(新エリアオープン前においてもプレオープンやグッズの先行販売を目的としてゲストが殺到したようです)。一方、USJにおいても2024年後半に「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の新エリア「ドンキーコング・カントリー」の開園を控えており、心くすぐるコンテンツが絶えず導入されているところは魅力を感じます。
オリエンタルランドの公式HP等によると、ディズニーリゾートの入園者数は、2023年度において約2,800万人となっており、コロナ前の水準に追いつく勢いで回復しています。また、入園料の高額化も顕著であり、チケット収入に着目すると2021年から2023年の間で倍近い値上げとなっております。2021年以降は日によって値段が変わる変動価格制が採用され、現在では大人1日のチケット料金のみで1万円を超える日もあります。
消費者としては、入場料の値上げが混雑緩和につながることで、快適に過ごせるようになると歓迎の声もある一方、今では「年間パス」も廃止されていることから、「お金がないと夢の国に行けない」との悲鳴も上がっています。交通費や宿泊費なども上昇しており、その他にも食事代やお土産代等のかかる費用を想定すると、地方の庶民では気軽に遊びに行けない世界になってきたなと驚愕です。さらに追い打ちをかけるようですが、追加で料金を払うことでアトラクションに優先的に入場できる「ディズニー・プレミアアクセス」(1人に対して料金が発生するので、家族4人だと4倍必要です・・・)や「バケーションパッケージ」(キャラクターグリーティングやショー・アトラクション等が優先的かつ快適に楽しめる権利・ディズニーホテルの宿泊料金がセットになったオフィシャルプランです。夢は叶いますが、料金設定も高く、HPやアプリでの予約もすぐに完売で手に入れるのは難しいです)がとても好評で、運営サイドとしては、年間パスで気軽に遊び来てもらうより、高い入場料・個別の利用料を設定し、高い付加価値を提供する方向にシフトしているようで、反応もいいことから、今後も高額化の流れが進むと予測されます。私としては気軽に楽しみたい気持ちもありますが、コロナ後の消費行動の変化や収益の最大化が求められることに加え、クオリティの低下は誰も望んでおらず、ブランドの維持も考えると仕方がないのかなと寂しく思います(私もUSJの年間パスを保有していた時は、お金を落とすこともなく散歩気分で何度も入園していました。今思うと、そういう人は、特別な日に特別な体験をしにきた入園者にも、特別な気分を味わってほしいパークにも迷惑だったのかなと思います)。
国内のテーマパークはディズニー、USJの二強の売上高・来場者数が突出しており、その考え方を倣うことはできませんが、地方のテーマパークやレジャー施設、体験型の商業施設等の評価を行う上で、消費行動の変化や施設側のコンセプト、ターゲットは非常に重要ですので、余暇市場や観光動向にも注視しながら、参考にしていこうと思います。