診療報酬・同一建物減算

2014/12/8


株式会社立地評価研究所 東京本社 小田 隆博

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム(30分圏内に必要なサービスが提供される日常生活圏域)の構築を目指し、「医療から介護へ」「施設から在宅へ」の医療・介護の一体改革の方向性が加速しています。

このような経緯から在宅医療の担い手を増やすため、外来診療よりも高額の在宅時医学総合管理料(在医総管)、特定施設入居時医学総合管理料(特医総管)を設定し、手厚く評価されてきました。

ところが2014年の診療報酬改定において、在医総管・特医総管に「同一建物・複数人に訪問する場合」が新設され、従来点数の約4分の1、訪問診療料も特定施設等とそれ以外の同一建物は2分の1に引き下げられることになりました。

これまで手厚く評価されてきた在宅医療において、診療報酬が大幅に引き下げられてしまったのでしょうか?

ここには、高齢者住宅の運営者が特定の医師に入所者を優先的に紹介し、その見返りとして診療報酬のキックバックを要求するなど不適切な事例がいくつか発覚したことによる対応が取られたという経緯があるようです。

今回の診療報酬の引き下げの影響は、医療機関だけに留まりません。介護付有料老人ホーム、サ高住、グループホームも同一建物となるため、この制度変更に連動して訪問診療を行う医療機関が撤退、交代するという事態が発生することになりました。

現状では、月のうち1日は全患者をまとめて診て、その他の日に1日1人、各患者の2回目の訪問診療を分散して行い、在医総管・特医総管を減額しない緩和策を取っている施設も多数みられるそうです。ただ、医療機関側、施設側双方にとっても管理面や効率面から不都合が生じていることは容易に想像できます。

さらに、訪問診療の連携先の減少や医療機関の確保が困難な場合は、現状運営している施設の競争力の低下を招き、また、サ高住のような市場が急拡大している高齢者住宅の供給が抑えられることも懸念されます。

加えて、介護報酬においても、2012年度に施設やサ高住などに訪問介護や訪問看護などの事業所を併設し、同一建物内30人以上の入居者にサービスを提供した場合、介護報酬が1割減算される改定が行われており、次回の2015年度介護報酬改定への影響も懸念されます。

対象となる施設・高齢者住宅等における提携医療機関、医療体制等は市場競争力に影響を及ぼすため、鑑定評価の立場からもこれらの理解が必要となりそうです。